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ゴミの中から史料

 9月は学会シーズンで、今週末と来週末は、立て続けに学会に出席します。今週のは都内だったので近かったですが、来週は四国に乗り込む予定です。

 学会に行くと他の研究者の発表を聴いて刺戟になるのがいいのですが、改めて歴史分野の研究は地道な作業だと思わされました。

 或るご年配の先生の研究発表が一番面白かったので、それを紹介します。今回は原史料も多数見せていただきながらのご発表でした。20数点に及ぶそれらの史料を何処から見付けてきたかと言うと、何とゴミの中からだというのです。

 何の史料かと言うと、長崎のキリシタン文書でした。その先生のかつての同僚の方が、もう数十年前の話のようですが、外務省で史料調査をしていたところ、省内の廊下に高く積み上げられた古書を発見。何だろうと見ていると、どれも古文書だったのだそうです!建物の外には古紙回収のトラックが止まっていたそうで、正に間一髪でそれらの史料を持ち出し、詳しく見てみたら、幕末に長崎奉行所が没収したキリシタンたちの持ち物だったことが判明。明治政府になり、長く奉行所から受け継がれた史料を何処かに置きっぱなしにしておいたのでしょう。それで、歴史史料にうとい人が、官僚らしく杓子上記に、何年以上過ぎた文書は廃棄、と考えて、一斉に処分しようとしたのだと思います。こうして、歴史研究者の目からすれば宝の山であっても、一般の人から見れば単なるゴミにしか過ぎない。よく歴史研究者は奇異な目で見られますが、こういう古いものに対する感覚が鋭くないと(「嗅覚」がきくと言う言い方もしますが)、研究者としてやっていけないですね。しかも、これらの「ゴミ」がどういう史料であるか、それこそ地道に解読して、史料の価値を分析していく、そんな作業を長年その先生は続けてこられたわけです。歴史などの人文科学は、時間をかけてじっくりと成果を出していくことが本来のペースであると思わされました。昨今は何でも早く結果を出さなければいけない、早く効果を上げなければいけない、と研究にもスピードと効率を求める風潮がありますが、目先の成果ばかりを気にしていては、いい研究は出来ないと、改めてご発表を聴きながら思わされました。
by reparateur | 2007-09-16 00:08 | 歴史


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